
○換骨奪胎【かんこつ―だったい】 [冷斎夜話1](骨を取り換え、胎を取って使う意) 詩文を作る際に、古人の作品の趣意は変えず語句だけを換え、または古人の作品の趣意に沿いながら新しいものを加えて表現すること。俗に、 「焼き直し」の意に誤用。 (広辞苑第五版より。強調部引用者) 今回は、この事について考えてみたいと思います。 換骨奪胎とは、簡単に言うなら、「既存のアイディアを少しだけ借用し、自身のアイディアの中に盛り込み、全く違うものを作り出す」ということになりま す。 これを悪く言い換えると「パクリ」ということになりますが、しかし、単純に「パクる」事と決定的に違うのは、自身の新しいアイディアが存在するという事であり、それによって、既存のものとは全く違う、新しいも のを作り出すと言う事です。 幾つか例を挙げて言うなら、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズに代表される「能力戦闘モノ」の作品は、全て直接的或いは間接的に、「山田風太郎忍法 帖」シリーズの影響を受けています。また、日本国内のハードボイルドやハードバイオレンスものの作品は、その大多数が大藪春彦の影響下にあると言って、過 言ではありません。 こう言った事実は、あらゆる場所で指摘されながら、しかし、それを非難する人は居ません。というのも、こう言った作品の殆どは、そう言った元のアイディ アに、自身オリジナルの考え方を加味し、原型を「これがそうだ」といわなければ気付かないほどの、言ってみれば「エッセンスを加える」程度に収めているか らです。 例えば漫画「ジョジョ〜」シリーズでは、『スタンド』という、自身の背後霊(のようなもの)を操る能力が出てきます。 これは、今までは視覚的エフェクトに頼るしかなかった「超能力」の視覚化を狙ったものですが、その『スタンド』に様々な能力が付加されている点などは、 おそらく「忍法帖」からのアイディアだと思います。 この場合、超能力の(解りやすい形での)視覚化が主となっているのに対して、「忍法帖的異能力」が従となったもので、これこそが換骨奪胎が、極めて高レ ベルで発揮された好例だと思います。要するに「超能力の視覚化」という作者の目的 と、 「忍法帖的異能力」の二つが、密接に絡み合って、新しいもの――『スタンド能力』というアイディアが生まれたのだ、という事です。 換骨奪胎というのは、そう言うことです。要するに思考の化学反応な のです。 ただ単純にパクる事では無いのです。自身のアイディアに、他者のアイディアのエッセンスを加えることで、思考に化学反応を興し、今まで自分だけでは考え つかなかった、新しいアイディアをひねり出すと言う事なのです。 自身のオリジナルだけではなく、先人の作り出した知恵を学び、そこからまた、新しいものを作り出す――それこそが、換骨奪胎の目的です。それをやる事に よっ て、自身のアイディアもさらに広がっていきますし、また、新たなるアイディアも広がりやすくなるでしょう。 ※ 追記 この項目を挙げてすぐに、この「換骨奪胎」について、ある方から指摘がありました。 その指摘に関して、僕のほうでも思うところがあったので、「創作概論 コラム編」のところに、その意見に対する僕の考えと共に、コラムとして 残す事にしました。 詳しくは下記の項目へどうぞ。 「創作概論コラム編 盗作、盗用と『換骨奪胎』について」 |